ニュースの概要
Dubbing AIは、スマートフォンのUSB-C端子に挿して使うイヤホン型の機器「Dubbing AI Earbuds」を発表した。専用のモバイルアプリと組み合わせ、話した声をその場で別の声質やキャラクターの声に変えて相手へ届ける仕組みである。主な用途として想定されているのは、モバイルゲーム中のボイスチャット、オンラインでの雑談、配信といった場面だ。声の高さや雰囲気を変えられるため、素の声を出したくない人や、役になりきって遊びたい人に向いた製品といえる。音声変換を単なるアプリで終わらせず、イヤホンという身近な形にまとめた点が特徴である。
引用元: Dubbing AI、モバイルゲームとボイスチャット向けリアルタイム音声変換イヤホンを発表(Access Newswire)
分析・見解
声の変換が持ち歩ける道具になった意味
音声変換そのものは新しい技術ではない。パソコン向けには、配信者がボイスチェンジャー(=声を加工する装置やソフト)を何年も前から使ってきた。今回の違いは、スマートフォンのUSB-C端子に挿すイヤホンという形にした点にある。パソコンを持たず、スマホだけで遊ぶ層にも声の変換が届く。設定に手間取ることも減り、ゲームを開いてそのまま声を変えられる。
遅れの小ささが製品の価値を決める
ボイスチャットでは、声が届くまでの遅れが大きいと会話がかみ合わない。通話では、片道150ミリ秒前後が快適さの目安とされる。変換処理が加われば、その分だけ遅れが積み上がる。処理を端末内で行うのか、クラウドで行うのかでも体感は変わる。電波が不安定な外出先で遊ぶモバイルゲームでは、この差がそのまま使い勝手になる。声の種類の多さより、遅れの小ささが評価を分けるはずだ。
声も衣装のように売り買いされる可能性
ゲームの世界では、キャラクターの衣装を買う習慣がすでに定着している。見た目の着せ替えは相手に見せる楽しみだが、声の着せ替えは相手に聞かせる楽しみだ。ゲームごとに専用の声を用意し、有料で配る形が成り立てば、ゲーム会社の新しい収益源になる。ただし、実在の声優や俳優の声に似せる場合は、本人の権利の整理が欠かせない。声は顔と同じく、本人を特定できる情報だからである。
悪用への備えが普及の条件になる
声を変えられることは、自分を守る手段にもなる。嫌がらせを避けるため、あえて声を変えるプレイヤーは以前からいる。一方で、年齢や性別を偽る行為や、他人の声をまねた詐欺にも使えてしまう。声のまねを使った電話詐欺は海外で報じられており、無縁の話ではない。変換された声であることを相手に表示するなど、安心して使える仕組みを用意できるかが、広く受け入れられるかどうかの分かれ目になるだろう。
ビジネスへの影響
ゲーム会社が今から検討したい三つの点
まず、自社のボイスチャットが変換音声に対応しているかを確認したい。外部の機器が使われても、通話品質が落ちない設計が望ましい。次に、変換音声であることを示す表示の導入を検討したい。相手が変換だと分かるだけで、なりすましへの不安は大きく減る。最後に、通報の仕組みである。声を変えた利用者が迷惑行為をした場合に、記録をたどれる状態にしておく必要がある。
声のサービスを考える企業が押さえる点
声優や配信者の声質を商品にするなら、本人の同意と報酬の取り決めが出発点になる。契約で使える範囲、期間、地域を細かく定めておきたい。広告や接客の場面で使う場合も、人が話していると誤解させない配慮が要る。逆に、顔や声を出したくない従業員が働きやすくなる面もあり、社内の在宅窓口や動画配信での活用は試す価値がある。
小さく試して、遅れと安全を測る
導入を急ぐ必要はない。まず少人数で、実際の回線環境における遅れの大きさを測るとよい。次に、利用者アンケートで違和感や不安を集める。声の変換は面白さが先に立つが、信頼を失えば取り戻しにくい。楽しさと安心の両方を数字と声で確かめながら、段階的に広げるのが現実的な進め方である。
